2018年10月15日の沖縄タイムス、『消費者トラブル相談室』に寄せられていた相談に「あ~、これはよく起こりそう」と思ったものがあったので、私の意見も加えてブログでご紹介します。*記事の引用部分は青字表記&ハイライトをしています。
(引用ここから)
取引先の銀行から電話があり、普通預金は金利が低いので、金利のよいものに変えてはどうかと言われ、銀行に出向き説明を受けた。(続く)
取引先の銀行から電話で商品の提案がある
相談者は70代男性。
相談内容は「外貨建ての個人年金保険」についてです。ただ、そのきっかけが「取引先の銀行から電話」があったことで、「普通預金は金利が低いので、金利のよいものに変えてはどうか」と銀行から提案されるのです。
私は疑り深い性格なので(笑)、電話で勧誘ということだけで相手に都合のいい儲け話だなと思ったりもします。ただ、実際はそうではなく、銀行や証券会社でも実店舗の営業職は富裕層には直接電話をかけて営業していることもままあります。それがお仕事ですから。
勧められたのは外貨建ての個人年金保険
利率の高い定期預金を想定していたが、外貨建ての個人年金保険を勧められ、その場で契約し、普通預金から約500万円の保険金を一括払いで保険会社に振り込んだ。(続く)
500万円の預金を一度に動かせるわけですから、やはりこの方は富裕層なのかもしれません。たしかに今の超低金利時代に普通預金や定期預金など銀行や郵便局が扱っている商品で運用を続け、お金を増やすことは難しいです。
だからと言って相談者の方に勧められた外貨建ての個人年金保険という商品が70代という年齢の方にふさわしいかどうかは熟考する必要があります。
*ちなみに私の投資スタイルは株式や投資信託を中心にしており、保険商品での資産運用をしていませんし、おそらく今後もしないと思います。また保険の専門家でもないので、これから書くことはあくまでも参考書籍などで知った情報になることをご理解ください。
まず、この商品は「外貨建て」と「個人年金保険」という二つの組み合わせになっています。本来なら両方を分けて考えたいところですが、個人年金保険だけでも税金の控除額を含め、特約の付加の有無など仕組みが複雑なので、今回はあくまでも「外貨建て」の部分に絞って説明します。
外貨建て商品とは
文字通り、外貨で運用する商品です。
外貨でも米国ドル、豪ドル、ユーロなどいろいろありますよね。
保険料として支払った日本円が外貨で運用されるということは、「リスク&リターン」の世界に足を踏み入れることを指します。
つまり「自己責任」の世界です。
リターンとして考えられるのは利回り。おそらく日本の保険商品に比べ、長期で見ると高い利回りが得られると思います。ただ確実に増える、いわゆる元本型商品ではありません。
そして、一番大事なことが為替リスクです。
為替リスクとは
この商品の場合は外国為替相場の変動です。
たとえばわかりやすい例として、対米国ドルで考えてみましょう。
500万円を預けたとき(購入時)の為替レートが1ドル=100円だとします。
そのまま運用を続け、満期時にレートが円安になった場合(例:103円)、為替利益が出ます。
逆に円が高くなると(例:99円)たとえ保険商品の運用がプラスになっていても、受け取り金額が保険料よりも下回る可能性もあります。
為替レートは私たちがコントロールできるものではないので、注意を払う必要があります。また為替手数料も考慮しないといけません。
保険解約は可能かどうか
しかし、説明の中で為替リスクがあると言われたのを思い出し、急いで契約したことを後悔した。解約、返金を求めたいが可能か。
この相談者の方は賢いですね。急いで契約をしてしまったことを後悔されて、消費生活センターに連絡されているわけですから。
先ほども書いたとおり、外貨建て商品は保険にかかわらず、外貨普通預金でも為替リスクがあります。記事を読む限り、銀行の方も説明されたようですが、それが相談者の方にはしっかり伝わってはいなかったようですね。
クーリングオフ制度
今回の事例の場合、商品は保険商品なので、保険業法によるクーリングオフ(申込みの撤回または契約解除の請求)の規定が設けられています。
クーリングオフ制度は消費者を守る大事な制度ですよね。英語だとcooling off。頭を冷やす制度です(笑)。
申込みの撤回または解除の請求
一般的には契約書面を受けた日または申込みを行った日のいずれか遅い日からその日を含めて原則8日以内に、自筆による書面の郵送で申し込みの撤回などを行うことができます。
新聞記事には県消費者センターの回答も記載されています。
相談者へクーリングオフ通知の書き方を伝え、保険会社宛に特定記録郵便か書留で出すよう助言し、後日、「保険会社から返金されることになった」との連絡がありました。(引用ここまで)
よかったです(涙)。
今回は消費生活センターに相談したことにより、クーリングオフ制度が使えましたが、仮に8日を過ぎて解約した場合、解約返戻率がどれくらい設定されているのかも気になるところではあります。
資産運用を始める際のチェックリスト
最後に保険に限らず、投資商品を購入する場合の注意点を書いておきます。投資商品は必ずしも怪しい商品ではありませんので、必要以上に怖がらず、クールに付き合ってもらえたらなと思います。
- 電話での勧誘には注意する
- その場で契約しない(当日は資料を持ち帰るだけ)
- 高額であればあるほど家族や友人などに相談
- 商品のメリット・デメリットをしっかり把握する
- デメリットが理解できない場合は契約を見送る
- 仮に契約する場合は契約解除方法を確かめる
- 年間手数料や解約手数料など具体的な金額を把握する
- 仮に損をしても「勉強代」と思える金額で運用する
- 年齢に応じた投資スタイルを考える
最後の項目、「年齢に応じた投資スタイル」ですが、今回の外貨建て定期預金は20代〜30代の方で「ある程度リスクを取ってもいい」と思われる方であれば、選択肢の一つになると思います。
ただ相談者の方のように70代だとリスクの少ない<個人向け国債>や銀行の株を買うことで金利がほんの少し上乗せされた<株主優待定期預金>も選択肢に入れてもよかったかもしれません。
いずれにしても、2019年には消費税も上がるし、年金にも多大な期待はできないので、賢く資産運用をすることが私たちに求められています。資産配分、運用商品の特長、自分の年齢、リスク許容度などいろいろ天秤にかけて選択しましょう。
ちなみにクーリングオフ制度は認められないケースもあります。それに関してはまた後日書きたいと思います。
本日もブログを最後まで読んでいただき、ありがとうございました。